第2話 少年の話

ジェリーは姿勢を低くしたまま、足をからくり人形のように左右に少し揺れながら前身し、ピタリと止まった。

後ろを見れば、店主はいない。

もう大砲は鳴らないと踏んで、普通に歩き始めた。

周りも歩き始めていた。

少年は5人家族で、出征中の父と、生真面目な母と、優しい兄と、3歳の妹で貧しく、戦火の中を生きていた。

ジェリーの住む国は内戦の真っ只中だった。

政府軍と反政府軍に分かれ戦争をしていた。

まだ幼いジェリーには何故争っているのか、どっちが正しいのかもわからず、ただ危険で父も帰ってこないこんなものは早く終わればと思っていた。

ジェリーは家に着くとひとつのイモを置いて、もう1つを持って外に出た。

爺の家に向かった。爺はスラム街一の年寄りで、物知りだった。

爺の元には色んな人が色んな話を聞きに来たり、手伝いをしに来たりとしていた。

ジェリーもその中の一人だった。

爺の家に着くと、爺はいつも通り壁に寄りかかるように座り、編み物をしていた。

爺は足音を聞き、メガネを元の位置に戻すと、レンズ越しに少年の姿を捉えたのと同時に少年が声を発した。

「やぁ!大砲をまた撃ってたね」

「そうだな、あれは恐らく非政府軍側だろうな 東から聞こえたからな」

「ふーん。そういやうちでイモが取れたからお裾分けだよ。ここに置いとくね」

「あーありがとう」

爺は全てお見通しだ。そのことをジェリーは知っている。爺の為とゆえば店主が許してくれることも。ジェリーの生活は爺の重力を持って支えられ、戦時中のスラムの中で無事に回転していた。

スラム街はオレンジに染まっていく。

その現象を持って地球は自らの回転を証明していた。