第3話 路地裏での話

日は変わり、昨日とはコースがほんの少しだけ変わった太陽が昇った。

ジェリーは朝早くに起きた。

昨日寝ずに兄と遊んでいたジェリーを優しく「ほら良い子はもう寝なきゃだめよ」とゆって頬にキスをしてくれた母は既に居ない。

机にカビの生えたパンが一人分あったしかしそれは彼らの3人分だった。

ジェリーはそのパンの3分の1をかじり家を出た。

今日のジェリーは朝から活発だった。スラム街の東端のゴミ山へ行き使えそうなものを取ってかえってくるのだ。

その仕事は危険で度々痛い思いもしてそれは辛かったが、報酬も大きかった。

しかし元からゴミ山で住んでいるスカベンジャーと呼ばれる人々はそれぞれの持ち場を持ち自分たちに偉そうに当たってくる。

ジェリーが山をのぼり探していると、「こんなとこ素人がやるんじゃねえ!」とスカベンジャーの子たちが言う時スラムというヒエラルキーの底辺でさえヒエラルキーを作ろうとするのだから馬鹿らしいとジェリーは思ったが口にせず、場所を変えた。

スモーキーマウンテンが立ち上り、煙ったゴミ山の中で大丈夫そうな場所を漁りながらゴミ山を東へ東へ向かっていた。

すると遠くから火事だ!と怒号が聞こえる

ゴミ山では太陽光線との化学反応で火災が起こることがよくある。

火の手はすぐに広がる。

黒煙が立ちこめる

ジェリーは走る

ゴミ山を走る

スカベンジャー達の家々を抜け路地裏に入った

ジェリーは走り続けた

ジェリーは疲れて足を止め、辺りを見回した。

どこかわからないが、煙の濃い方がゴミ山であることが分かった。

随分と東に来たことをそれで知った。

ジェリーが帰るほうを探そうとキョロキョロしていた時見覚えのある顔が目に入った。

ジェリーを追い払ったスカベンジャーの1人だった。

彼も数分前のジェリーのように肩で息をして周りをキョロキョロしていた。

すると路地の影から黒い影が出てきて彼をさらった。

ほんの数秒の出来事だった。

ジェリーは何も感じる間もないままジェリーの本能が逃げることを促した、

しかし黒い影はジェリーを見つけるやいなや全力で追ってきた。

大人達のスピードはジェリーを捕まえるには容易過ぎた。

ジェリーは2人の男に両腕を捕まれ、そのまま首を強く絞められた。

ジェリーは気絶し男達の手中に渡ってしまった。

第2話 少年の話

ジェリーは姿勢を低くしたまま、足をからくり人形のように左右に少し揺れながら前身し、ピタリと止まった。

後ろを見れば、店主はいない。

もう大砲は鳴らないと踏んで、普通に歩き始めた。

周りも歩き始めていた。

少年は5人家族で、出征中の父と、生真面目な母と、優しい兄と、3歳の妹で貧しく、戦火の中を生きていた。

ジェリーの住む国は内戦の真っ只中だった。

政府軍と反政府軍に分かれ戦争をしていた。

まだ幼いジェリーには何故争っているのか、どっちが正しいのかもわからず、ただ危険で父も帰ってこないこんなものは早く終わればと思っていた。

ジェリーは家に着くとひとつのイモを置いて、もう1つを持って外に出た。

爺の家に向かった。爺はスラム街一の年寄りで、物知りだった。

爺の元には色んな人が色んな話を聞きに来たり、手伝いをしに来たりとしていた。

ジェリーもその中の一人だった。

爺の家に着くと、爺はいつも通り壁に寄りかかるように座り、編み物をしていた。

爺は足音を聞き、メガネを元の位置に戻すと、レンズ越しに少年の姿を捉えたのと同時に少年が声を発した。

「やぁ!大砲をまた撃ってたね」

「そうだな、あれは恐らく非政府軍側だろうな 東から聞こえたからな」

「ふーん。そういやうちでイモが取れたからお裾分けだよ。ここに置いとくね」

「あーありがとう」

爺は全てお見通しだ。そのことをジェリーは知っている。爺の為とゆえば店主が許してくれることも。ジェリーの生活は爺の重力を持って支えられ、戦時中のスラムの中で無事に回転していた。

スラム街はオレンジに染まっていく。

その現象を持って地球は自らの回転を証明していた。

第1話 はじまりの話

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タッタッタッタラッタと

狭い、暑い人の隙間を1人のの男の子が走り、その後を1人の男が追っていた。

男の子はジェリーと言った。ジェリーの手には2つイモを持ち走った。男はイモを売っていた店の店主である。イモを盗んだジェリーを追いかけている。

ジェリーは逃げる、男は追う。

非常に単純明快である構図で、非常に単純明快な理由による、ありきたりな出来事ではあるが、彼らはその出来事で今日の飯の有無が関わるのである。

そんな街だ。

そんな国だ。

生きるということは食いつなぐということを意味している。

遠くで大砲の音が聞こえる。

皆それぞれが姿勢を落とす。

その隙にジェリーは姿をくらます。

静かなスラム街で店主の舌打ちだけが響いた。

そんな国での、お話