第1話 はじまりの話
タッタッタッタラッタと
狭い、暑い人の隙間を1人のの男の子が走り、その後を1人の男が追っていた。
男の子はジェリーと言った。ジェリーの手には2つイモを持ち走った。男はイモを売っていた店の店主である。イモを盗んだジェリーを追いかけている。
ジェリーは逃げる、男は追う。
非常に単純明快である構図で、非常に単純明快な理由による、ありきたりな出来事ではあるが、彼らはその出来事で今日の飯の有無が関わるのである。
そんな街だ。
そんな国だ。
生きるということは食いつなぐということを意味している。
遠くで大砲の音が聞こえる。
皆それぞれが姿勢を落とす。
その隙にジェリーは姿をくらます。
静かなスラム街で店主の舌打ちだけが響いた。
そんな国での、お話